68回目の終戦記念日

松田十刻の「紫電改よ、永遠なれ」読了。「祖国防衛に散った若者たち」という副題がついた戦記ものです。

主人公は、啄木を愛する文学少年だった菅野直。のちに戦闘機乗りになって、南洋の対戦で零戦を操り奮闘します。戦局が日増しに悪化する中、松山基地で編成された第三四三航空隊に招集され、新鋭機「紫電改」を装備した戦闘飛行隊を率いて空の超要塞B29に闘いを挑むというストーリ―です。
どこかの空港で買って、読みかけの文庫本を帰省の友にしたのですが、轟音の中で自分がスロットルレバーを握っているかのような迫真の戦闘シーンと、登場人物たちの心の動きを追ううちに夜が明けてしまいました。

紫電改は、川西航空機が開発した海軍の局地戦闘機。川西は現新明和工業で、宝塚市にあります。
小学生の頃、プラモデルにはまっていた私は、零戦はもちろん、飛燕、一式陸攻、戦艦武蔵、メッサーシュミット、カ-チスP40、スーパーマリン・スピットファイヤー、ティガ―Ⅰ・・・あと、どれくらい作ったかな、紫電改はリモコン戦車の次にお気に入りでした。
空襲で生家を焼かれた父が、「B29 を落とせたのは紫電改だけ」と話していたせいかもしれません。

巻頭に、端正な顔立ちの菅野大尉の写真――実在した空の勇者はまだ22歳でした。職業軍人になったけれど、戦争の意味や大義名分はわからない。自分が護っているのはお母さんと、お母さんのような祖国。特攻の非人道性と、撃墜された機の搭乗員を救助しに来る米軍の人命に対する考え方、祖国を攻撃されて初めて南方の島々で自分たちが破壊してきたものに気づく場面もあって、切なくなります。
終戦記念日は靖国参拝報道で相変わらず騒がしく、戦没者追悼式での安倍首相の式辞が問題に――(「不戦の誓い」は省かないで!) この日を迎えられなかった若者たちはどんな思いで見ているのでしょう。

戦闘機がプラモや伝説の中でのみ活躍することを願ってやみません。

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